そこには安心させるものがあった。
手を伸ばせばすぐ届く、そんなところにあった。 手を伸ばしてみた。 身体が重くて、想うように動かない。 少し、イラっとした。 言うことを聞かない身体が邪魔だと思った。 そんな気持ちを抑えて、手を動かし続ける。 指先が『それ』に触れた。 「────っ」 感触が予想以上で、声にならない声が上がる。 コクンとのどを鳴らして、つついてみた。 見た目通り柔らかくて、ぷにってへこむんだけど指を離すと元の形に戻る。 『それ』は暖かかった。 なんだか触っていると安心できて、癖になる。 反対側の手も動かして『それ』に触る。 つまんでみる。 引っ張ってみる。 ぐるぐる円を書いてみる。 とにかく、色々やってみた。 そしたらなんか楽しくなってきて、口元が緩む。 私は笑っていた。 ちょっと、悪戯っぽい微笑。 「ん・・・・」 身体がすぐに反応して、部屋から私の姿が消える。 声を発してから目覚めるまでに10秒。 視界の端で何かが動いたのが見えた。 意識が覚醒するまでに20秒。 風が顔にそっとあたる。 状況を理解するのにさらに10秒。 いつもと同じで、でも少し違う光景が視界に広がる。 俺は微笑んで、ベッドの下に声を掛けた。 「おはようございます、眠り姫」 手を差し伸べて、そう言った。 More 2月30日 彼女はいまだ眠り続けている。 Sleeping Beauty 眠り姫 俺は彼女をそう呼ぶことにした。 ────。 男はいつの間にか、喋りかけるのを諦めたようだった。 ざっ、と言う音が鳴った。 男はそこに腰を下ろして、空を見上げていた。 私と同じように、空に吸い込まれるように────。 私もまた、空へと意識を戻す。 空は変わらず、ゆっくりと雲が流れる。 太陽は、時折雲間に隠れてはまた、顔を出す。 時がゆっくりと流れる。 More 2月26日 今日も、何事も無く過ぎていくようだ。 何事も無く・・・ 彼女をベッドに寝かせて、丸1日がたった。 しかし、彼女は目覚めない。 目覚める気配が、一向に感じられないのだ。 呼吸はしている。 脈拍も、多少弱いが安定している。 いつ目覚めても、おかしくは無い状態のはず。 彼女は一体、いつ目覚めるんだろうか? ────。 More 2月25日 散策中、不思議な少女を発見した。 彼女は、森深くに倒れていた。 彼女の身を包んでいた薄手の青白い服。 上から下までつながっていて、ワンピースのような形状だった。 年齢12~15歳 身長約130cm 比較的痩せ型で、髪は腰あたりまで伸ばしている。 外傷は特に無し。 ただし、あちこちに打ち身や打撲らしき跡がついている。 脈拍は正常値より多少下回っているものの、問題というレベルではないだろう。 簡単な診察をしてみた結果としては、特に異常も見られない。 行き倒れかどうかとも思ったが、そう決めるのはまだ早計だろう。 しばらくは、様子見が必要そうだ。 なぜ倒れていたのか、色々と不思議な点がいくつかあるが、どれも彼女が目覚めなければ分 からないことだ。 彼女が目覚めたら、聞いてみる必要がある。 ────。 More 人の良さそうな微笑を浮かべている。 看護師・・・? ベッドが3つ? 腕、こんなに細かったっけ? 身体が重い なに? 誰だ? 木・・・、山小屋? これは・・・ 意識が渦巻く。 最悪の目覚めから来るものもあって、まるで頭が働かない。 疑問は混乱を呼ぶばかりだ。 「───気分はどうですか?」 男の人が心配そうな顔で覗き込んでくる。 私はよほど難しい顔でもしていたのか、と内心苦笑する。 ひとまず口を開いてみる。 ぎこちない動きと共に、ゆっくりと口が開いた。 喉を震わせ、風を送り、声を絞るように出す、はずだった。 「あぁ・・・ぅ・・・」 出てきたのは赤ちゃんのような声。 そんな声に驚き、口を慌ててつぐむ。 どの動作をとっても動きがまだ硬く、いまだに思うように動かなかった。 「あぁ、無理に喋らなくても良いですよ。」 柔らかい声だな、と思う。 人を安心させる優しさが、その発せられる言葉の一つ一つから届く。 「貴女はまだ寝ていたほうが良いようですね。」 届くが、内容は理解できなかった。 やはりというか、まだ頭は眠っているようだ。 「心身共に完全には目覚めていないようですし。」 自然な動きで瞼が下りてくる。 目を閉じ、擬似的な闇が形成され、意識が沈む。 「─────。」 誰かが何か言ったような気がしたけれど、何も聞こえなかった。 私は深い眠りに落ちていた。 More 私は目覚める。
別に、妙な力や心理に目覚めたわけではない。 朝の眠りから覚めるように、目覚めたのだ。 ただ、気分爽快というものには程遠い。 はっきり言えば対極にあたる、最悪な目覚めだった。 身体が硬い。 動かそうとすると崩れてしまう石像のように、全身が硬い。 ゆっくり、しかし出来るだけ早く、感覚を全身に張り巡らす。 心を張りつめ、 少しずつ感覚が戻ってくる。 身体がほぐれるように硬さが消え、少しずつ柔らかくなっていくのが分かる。 それと同時に、音が聞こえ始める。 鳥の鳴き声、風の音、木々のざわめき、そして火のはぜる音。 それらの音を聞き、ゆっくり、息を吐きながら瞼を開ける。 瞼が開く。 光が飛び込んできて、うっ、と声が漏れる。 少しの間、光で視界が一杯になる。 More 私は失った。
それが何だったのかさえ、思い出せない。 大切なものだったのだろう。 失ったと自覚できるほどに、喪失感は果てしなく深く、大きい。 いや、“深い”や“大きい”と言う表現には語弊があるかもしれない。 なぜなら、失ったものが何であるか分からないからだ。 何であるか分からないのに、深いもないだろう。 そう。 私は分からない。 何も、何も分からなくなっている。 自分の名前から何から、全て。 大切に思った物・人。 それは、あったのだろうか? 過去の記憶。 それは、あったのだろうか? 何も分からない。 ───。 根本的なことを、考えてみよう。 そもそも私は、存在していたのか? もし仮に存在していたとして、人だったのだろうか? ────。 考えたところでそんなこと分かるはずもないよな、などと思い苦笑する。 全てが闇
みなさん、はじめまして^^
当ブログ管理人のゆうと申します。 このブログでは 不定期更新ですが、まったりと小説(管理人のただの趣味デス)の連載をしていこうと思います ので、どうぞよろしくお願いいたします。 感想、意見等ありましたらコメントを頂けるとうれしいです^^ それでは、ブログ小説 -ユメコイ- をお楽しみください^^
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